review blog ためつすがめつモノカキ田川ミメイの色々レビュー。 |
クウネルとクウネルの本
2009-11-06-Fri-01:37
ポストにこの本を見つけると、いつも嬉しい。江國香織と妹さんの往復書簡と川上弘美の掌編が目当てで定期購読をはじめたのだけれど、「ストーリーのある暮らし」というコンセプトの雑誌なので、どの記事も「読み物」として楽しめる。そして又写真が素敵で、ついついうっとりと見惚れてしまう。といってもファッション誌のグラビアとはまったく違っていて、映っているものは、どれも素朴でシンプル。とてもお洒落なのだけど、トレンドの最先端というようなオシャレではないのだ。どちらかといえば、ちょっと懐かしいモノたちが、息を吹き返して活躍中、とでもいうような。かっぽう着とか毛布とか、お総菜とかお弁当とか。キッチンもぴかぴかのシステムキッチンではなくて「台所」。使い込んだモノ、大事に育んできたもの。それらが本当に素敵で、こういう暮らしがいいなぁ、と憧れる。
連載や特集記事のいくつかは何冊かの「クウネルの本」となって刊行されているので、今までクウネルを読んだことがないという人には、こちらもオススメ。手書きの「伝言レシピ」や、素敵な「台所」ばかりを集めた本や。実用的で尚かつ見て楽しめる本ばかりです。
東直子「ゆずゆずり」
2009-10-30-Fri-02:10
実際に起こったことを元にしたという小説。といっても出来事は日常の中の些細なことで、普通なら見過ごしてしまうようなこと。そこから広がる思考や甦る記憶が何気ない物語を生みだしている。淡々とゆるゆると続いていく日々が心地好くて、このままずっと読み続けたいような感じ。きっとまたふと思い出しては頁を捲ることになりそうな一冊。
東直子は歌人である。なので、もちろん短歌も素敵なのだけれど、あたしはこの人の小説が好きだ。と言っても実はまだ2冊しか読んでいない。この「ゆずゆずり」と「とりつくしま」。どちらも不思議な空気感のある物語だけれど、「とりつくしま」の方はちょっと哀しい。淡々と書いてあるし泣かせようなどという意図も見えないのに(だからこそ?)、潜んでいる哀しみが滲み出てくる。つまりはそれだけ優れた書き手だということなのだけど。この「ゆずゆずり」の方はもっと淡々としていて、いつまでも何度でも読みたくなる。そういう意味ではこちらの方が好きかな。ガジェットに並べたのは全て東さんの「小説」で、未読の本も読みたいのだけれど、一気に読んでしまうのが勿体ないような気がして、あえて「とってある」のだ。ふふふ。
椎名誠「大きな約束」
2009-10-23-Fri-01:29
あの「岳」くんも、もう父親なのだ。その息子の「風太」くんは椎名さんのことを「じいじい」と呼ぶ。時を経て、世代を重ねた「岳物語の続編」という本書だけれど、描かれているのは変わらずにパワフル(西に東に、写真に執筆)な椎名さんの日常。その部分はエッセイに近いけれど、でも家族(特に風太くん)への気遣い、労り、愛情が素直に表わされているところは、やはり私小説ならでは。既に続編も出ていて、そちらはより家族のことに触れていて、たぶんこれからも椎名さんの家族を軸とした私小説は続いていくのだろう。
このガジェット「椎名誠1」は、どれも私小説。「岳物語」はあまりに有名だけれど、「海ちゃん、おはよう」は椎名さんの長女の事を書いたもので、こちらは初めて子どもを持つ父親の戸惑いや困惑が素直に書かれていて、岳物語の父親像とは少し違うかも。若き日の椎名さんが、なんだか微笑ましい。「犬の系譜」と「波切り草」は少年時代を描いたもの。「帰っていく場所」と「ニューヨークからきた猫たち」は、子ども達が大人になってからの比較的最近の短編集。どれもオススメだけれど、一番好きな作品は「犬の系譜」。短編集2冊は私小説とも創作物ともとれるような作風で、椎名さんのエッセイとはまた違う、静かで繊細な世界が味わえます。



